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仙台地方裁判所 昭和53年(わ)373号 判決

本籍

宮城県石巻市真野字日向八番地

住居

同県同市中央三丁目三番五号

会社役員

奥津健吉

昭和七年一月一五日生

本店の所在地

宮城県石巻市明神町一丁目二番六四号

法人の名称

だるまチップ工業株式会社

代表者

代表取締役 奥津健吉

右両名に対する法人税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官浦井義光出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人奥津健吉を懲役六月に、被告人だるまチップ工業株式会社を罰金四〇〇万円に処する。

被告人奥津健吉に対し、この裁判の確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告会社だるまチップ工業株式会社は、宮城県石巻市明神町一丁目二番六四号に本店を置き、製紙原料であるチップの製造販売等の事業を営む資本金二〇〇〇万円の株式会社であり、被告人奥津健吉は被告会社の代表取締役としてその業務全般を統轄しているものであるが、同被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空の材料費(立木及び素材の架空仕入費など)を計上するなどの不正の方法により所得を秘匿したうえ

第一  昭和四九年七月一日から昭和五〇年六月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が三一四三万二九五七円でこれに対する法人税額が一一五八万四三〇〇円であるのにかかわらず、昭和五〇年九月一日、宮城県石巻市千石町二番三五号所在の所轄石巻税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一四八二万二七〇三円でこれに対する法人税額が四九五万六三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額と右申告法人税額との差額六六二万八〇〇〇円を免れた

第二  昭和五〇年七月一日から昭和五一年六月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が四五三九万二九六四円でこれに対する法人税額が一七〇八万二〇〇〇円であるのにかかわらず、昭和五一年八月三〇日、前記石巻税務署において、同税務署長に対し、所得金額が二〇一〇万七二八四円でこれに対する法人税額が六九八万六六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額と右申告の法人税額との差額一〇〇九万五四〇〇円を免れた

ものである。

(証拠の標目)

判示事実全部につき

一  被告人奥津健吉の当公判廷における供述

一  同被告人の検察官に対する供述調書四通

一  同被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書二三通

一  同被告人作成の上申書七通

一  同被告人他一名作成の上申書二通

一  被告会社の登記簿謄本

一  検察事務官作成の電話聴取書

一  奥津文男、奥津秀子、相沢衛の検察官に対する各供述調書

一  奥津文男(六通)、奥津秀子(二通)、奥津勘助、石川美千子、三浦次夫、斉藤勲、相沢衛(昭和五二年六月一六日付)、勝然藤一、高橋順吉、今野忍、佐々木栄助、高橋安芳、千葉稔、阿部勇三郎、渡辺春治、荒木清一、阿部利一、阿部初吉、阿部幸一郎、藤巻十三、奥津健三郎の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  奥津文男(二通)、石川美千子、千菅勝男、岡本栄司、安曇英夫、中村武三郎作成の各上申書

一  大方弘男作成の申立書

一  今井清之作成の答申書

一  橋本幸也作成の簿外金調査書、交際費等の損金不算入の調査書、未納事業税の計算書、銀行調査書類

一  佐藤栄吉作成の製品の期末たな卸高の調査書、貸付金に対する認定利息の計算書

一  荒木清一、岡忠一、今野忍、佐藤精一、佐々木栄助、武山重治郎、高橋順吉、高橋安雄、高橋孝、高橋はつみ、高橋安芳作成の各取引内容照会に対する回答書

判示第一の事実につき

一  押収してある法人税確定申告書一綴(昭和五三年押第九二号の一)

一  橋本幸也作成の脱税計算書(昭和五〇年度分)

一  相沢衛(昭和五二年一二月一二日付)、西條文人の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  高橋末吉作成の名儀書換料の照会に対する回答書

一  仙台国税局調査査察部長作成の取引内容に対する照会書三通(東海武司宛、針生隆雄宛、日野正一宛)

一  佐藤栄作成の昭和五〇年度修正申告書(謄本)

判示第二の事実につき

一  押収してある法人税確定申告書一綴(昭和五三年押第九二号の二)

一  橋本幸也の脱税計算書(昭和五一年度分)

一  石垣藤郎、佐々木義政、岩上勤、氏家和郎の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  阿部朝治郎、阿部一、石垣藤郎、大藤幸三、今野勝喜、佐々木義政、千葉忠男、新田盛、畠中宏毅、針生定吉、山内俊康、高橋功、高橋喜三郎作成の各取引内容照会に対する回答書

一  仙台国税局調査査察部長作成の取引内容に対する照会書四通(後藤昇宛、高橋寛宛、千葉忠一宛、早坂清治宛)

一  佐藤栄作成の昭和五一年度修正申告書(謄本)

(法令の適用)

被告人両名の判示各所為はいずれも法人税法一五九条一項、七四条一項二号、一六四条一項に該当するところ、被告人奥津健吉の判示各所為についてはいずれも所定刑中懲役刑を選択し、被告人両名の判示各所為はいずれも刑法四五条前段の併合罪なので、被告人奥津健吉については同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で同被告人を懲役六月に処し、被告人だるまチップ工業株式会社については同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で同被告会社を罰金四〇〇万円に処し、被告人奥津については情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から二年間右刑の執行を猶予することとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 今井理基夫)

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